イッセー尾形、インタビューに答える

イッセー尾形昭和天皇を演じたというニュースを聞き、また、その映画が日本での公開が難しいということも聞いていたので、非常に興味を持っていた。


元来英邁な君主だった天皇が、敗戦後、死を覚悟していたにもかかわらず宮中や政界、GHQというかアメリカなどの意向により生かされ、その後日本の象徴として戦後を40年以上も生きていく―というその生涯そのものもさることながら、真崎甚三郎、斎藤瀏といった2.26事件の関係者のことを忘れずにいる*1その記憶力を持っている。その一方で、柔道の山下泰裕に「投げられると痛いですか」という趣旨のことを尋ねたりするようなおとぼけっぷり*2。さらに、「雑草という名前の草はない」に代表される名台詞。はっきりいって、実像が全くつかめない。表現するにはあまりにも深い文学的テーマだ(映画では、1946年までであるが)。

―演じきり、昭和天皇という方をどう思いましたか?

 「劇中で陛下は自分を神とあがめることを否定します。一人の人間が『自分は人間である』と宣言する。なんて悲しい、なんてナンセンスなんだ、と思いました。これを世界中で唯一、背負わされた人間が昭和天皇。あの大変な時期に、権力の頂点に立たれた。これは想像を絶することです」

 ―会見では「見ていない人と同じ土俵に立ちたくない」と話しました。

 「言いたかったのは、とにかく見てほしい、ということ。見ていただかないことには、映画の意図することは何も伝わらない。日本公開は難しそうですが、正直、理解できません。今後、海外の映画館や映画祭では上映されるので、日本の方も見てほしいです」

この記事およびインタビューから察するに、非常に面白そうな映画なんだけどな。もったいない。

*1:『正論』2005年1月号、P270〜271

*2:文芸春秋』2005年1月号だったと思うが、手元にないので不確か