面接。


初めて学生自習室に入った。
係員が演習室の回廊に通じるドアから出てきて名前を呼ぶ。
フェイントだ。ずっと入り口を凝視していたのに。


ゼミのツレが来た。私服かよ。さすがに浮いている。
もっとも、結果に影響することはないだろうが。
奴は卒業が確定しているらしい。必死だ。

しばらく喋ってたが、俺が呼ばれたので終わり。
荷物を持って出る。
演習室に入る。


教官は3人。うち俺が知っているのは一人。
質問が飛んでくる。
動機?簡単だ。あれ?出てこない?
しどろもどろになる。
ペースをつかめない。緊張から回復できない。
教育行政やサークルの話で何とか盛り返す。


そして終了。10分強といったところか。
こんな面接で三分の一を切り捨てることなど可能なのか?
しかし水増ししたとしても不安が残る出来であったことも確か。
虚脱状態。蹌踉として建物を出る。



帰宅して、親から出来を聞かれる。
触れられたくなかったので「知らん」で押し通したら喧嘩になった。


「親と子が『言ったって始まらない』で済まされていいはずがない」
「就職して家族を養うことが大前提だ」


親父の本音が垣間見えた気がする。
結局、貴方も子供に期待しているのですね。
そして貴方の言葉にはリアリティーを感じます。
だからこそ僕は家族なんか要らないし、
親にも過剰な期待をしないのですよ。

いや、むしろ「親の言うことを聞け」
という単純なフレーズを言えばいいのに。
聞きますよ。自分には特に夢なんかないし、
こんなに自分にかまってくれる人間がいるということがむしろ嬉しい。
親に過剰に期待されるのは嫌だけど、親を傷つけるよりははるかにマシだ。


こういうことを書くと、
「もっと厳しくしつけてくれたらオレはぐれなかったんだ」
とか施設でほざくダニ同然のクソガキと同じなんだが。
実際、似たようなもんですよ。
俺は何も出来ない。理屈ばっかりで行動力を伴わない。
だから俺には魅力がない。ゆえに人から好かれない。
束縛とはいえ、自分にかまう人間の存在は嬉しい。


ともかく、不愉快な思いでテレビをつけたら、
親をしばく娘の姿や、
「ママと彼女とどっちが大事なの?」
と聞かれて答えられないダメ男。
(よく見たら「家政婦は見た!」だった)
俺はこんなクズにはならないと独りごち、矜持を保つ。